サンスクリット語とパーリ語

まず、ややこしい事柄を整理しよう。

 

 仏教はインドで生まれた。インドからシルクロード経由で中国に伝わり、そこから朝鮮半島や日本に伝わった北伝仏教というものがある。もちろん日本の仏教は北伝。一方で、インドから海路で東南アジア一帯に広がった南伝仏教というものがある。

 

 伝来ルートが違うせいか、お経の元のコトバが違う。北伝仏教はサンスクリット語三蔵法師なんかがインドから持ち帰ったお経はサンスクリット語で、それを当時の中国語に翻訳したのが、われわれの知る「お経」だ。

 梵字なんてのがあるけど、あれは当時のサンスクリット語を表記するのに使われた文字。サンスクリット語は、西欧世界でのラテン語みたいなもので、インドの古典やヒンズー教の礼拝用に使われている。ラテン語はとっくに死語だけど、サンスクリットはネイティブ・スピーカーが1万人ぐらい存在するそうだ(そうした人たちがサンスクリット語で文章を書くときは、ヒンディー語と同じデーヴァナーガリー文字を使う)。

 

 一方で南伝仏教パーリ語サンスクリット語みたいなもんだけど…ラテン語も、最初は公用語としてのラテン語があったのが、民間に広がって一般人向けの俗ラテン語というものができた。パーリ語もそうした、サンスクリット語の一般向けの言葉。今では死語で、南伝仏教でしか使われない。文字もパーリ文字というものはなく、南伝仏教の国の、その国の文字が使われる。

 

 ウィキペディア仏教用語を調べれば、サンスクリット語パーリ語と、両方のアルファベット表記が出てくる。西欧世界ではサンスクリット語のアルファベット表記を使うことの方が圧倒的に多いようだ。

 

 しかし私が知る限り日本で仏教を研究する人は、漢字のお経と、サンスクリット語のと、パーリ語のとを対照するものらしい。とくに南伝仏教パーリ語のお経は、お釈迦様が実際に言ったことを、より正しく伝えていると考えられているみたい。だからウィキペディアでも、サンスクリット語パーリ語とが出てくる。

 

 

とにかく仏教には北伝と南伝があること、北伝はサンスクリット語(から中国語に翻訳された)、南伝はパーリ語と覚えておいてほしい

  

このブログでは、アメリカ在住の知人が読むことを念頭に置いているので、基本的にサンスクリット語を使うことにする。